吟遊写真 | TOP旅行記 > 小倉・森鴎外巡りと、鈍行の旅



ちなみに森鴎外旧宅。
建物自体は(ほぼ)当時のままだが、場所だけは移転している。
元々は小倉駅前にあったが、駅前広場拡張に伴い移設されたのだ。





本来の建築場所にはこのような石碑が建っていた。




さて、旧宅。
移転先は飲み屋街?というか、入り組んだ通りの奥にあるようで、
細道が簡略化された地図だと大雑把すぎて非常に分かりづらい。
しかも土砂降りなので視界が悪く、地図とにらめっこも一苦労。雨で地図がふやけていく。
どこだ、どこだー、ときょろきょろしながら雨の中歩くことしばし。



「あった!!」

無事、鴎外さん宅への道しるべを発見。
なんとかたどり着くことに成功した。









この天気なので流石に先客はいなかった。
広い旧宅を独り占め。
別棟に建っている建物の窓の奥で、管理人さんらしき人が身じろぎしたのを感じつつ玄関へ。

「……おじゃましまーす」

中は結構広く、部屋の数は6つ。
奥に見える庭には、紫色のアジサイが綺麗に咲き誇っていた。
当時はこの母屋の他に馬小屋もあり、庭ももっと広かったらしい。
鴎外が此処に住んでいた当時、彼は離婚して独身だったというから、
お手伝いさんを雇っていたとはいえ、結構優雅な暮らしをしてたんじゃなかろうか。








一通り部屋を見て回った後、荷物を置いて居間にごろんと座ってみた。

「静かだなあ……」

あの土砂降りも、部屋の中から聴くとなんとも旅情に溢れている。
人の声のしない、シンと静まり返った中に響く雨の音。
叩きつけられる雨粒の重さでアジサイの葉が幾度もしなる。
庭の向こうはあんなにも激しいのに、この旧宅にいると、
ゆっくりした時間の中にまどろんでいる様な心地になるのが不思議だ。

初めてきた場所なのに、何故かほっと落ち着ける、そんな雰囲気の建物だった。
こういう場所なら創作意欲も湧きそうだな、と、小さく笑った。







帰り際、記帳用のノートにひとこと書き残してみた。
実は普段は見るだけであまり書いたりはしないのだけれども。
……今日は妙に書きたい気分だったのだ。

きっと雨のせい。

そんなことを内心呟いてから、家の前の鴎外の銅像にそっとお辞儀をした。

「お邪魔しました」



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